カテゴリー別アーカイブ: 本の紹介~Hill Books

【本のご紹介 vo.131】『採用学』

『採用学』
 服部 泰宏(著)/新潮選書

 2016年卒の採用スケジュール変更から始まり、2017年卒のスケジュールも再変
更と、新卒採用を取り巻く環境は揺れ動いています。

 それに伴い、各企業の採用活動にも戸惑いや混乱もある一方で、この機に自社
の採用を見直し、独自の工夫で採用活動を展開するなど新たな動きも見られます。

 日本で行われている採用活動の大半は、経験と勘に頼りがちで、効果的な見直
しができていないといいます。では自社の採用についてどう見直し、自社に最適
の採用活動を展開できるのでしょうか。

 本書では、経験や勘に頼らず、「ロジック」と「エビデンス(データに基づく
根拠)」をもとに自社の採用を見直し、再構築する考え方を紹介されています。

 例として採用を検討する際にどの能力を重視するのか、採用基準をどう設定す
るのかという場合を見てみます。8割以上の企業では口頭でのコミュニケーショ
ン能力を重視するという調査結果が出ています。しかし心理学のロジックから見
ると、コミュニケーション能力は育成の機会があれば比較的向上しやすい能力だ
といいます。

 採用基準として考えると、入社後に育成可能な能力よりも、自社に必要であり
かつ育成の機会がない・育成自体が難しい能力に着目するほうがミスマッチを減
らすことにつながります。

 また、採用面接時のデータ(エントリーシートや適性検査、面接評価)と研修
など育成の場面の効果測定データ、人事評価のデータ、社員満足度調査など、バ
ラバラに扱われているデータを丁寧につないで見ることで、自社に最適な人材の
エビデンスを得られるといいます。

 応募から育成~定着までをシステムで考え、採用の設計しオペレーションまで
を「デザイン」する力が、自社の採用力を決定づけるとのこと。限られた人材を
活かした経営が求められるこれからの時代では、採用をデザインする力はますま
す必要となりそうです。

【本のご紹介 vo.130】『組織のなかで人を育てる-企業内人材育成とキャリア形成の方法』

『組織のなかで人を育てる-企業内人材育成とキャリア形成の方法』
 佐藤 厚(著)/有斐閣

 人材育成について考えるときには、組織の立場からどう育成の仕組みをつくる
か、どう働きかけるのかという「育てる」視点と、個人がいかに自律的にキャリ
アを形成していくべきなのかという「育つ」視点の2つの考え方があります。

 この2つの視点は、別々に考えられる傾向がありますが、これからの人材育成
において、これらの視点を同時に意識して人材育成を考えること、つまり個人と
組織との協調的な関係づくりの必要性を本書では述べられています。

 個人と組織との協調的な関係づくりを行うためには、個人が考える「なりたい
人材」と、組織が考える「なってほしい人材」を丁寧にすり合わせていくことが
重要だといいます。

 そのすり合わせの過程で最も重要視されているのが、日々の仕事を通じての訓
練(OJT)です。日々のOJTを通じて、訓練する側(組織)の、部下育成を
進めるためのPDCAサイクルと、学習する側(個人)のPDCAサイクルをう
まくかみ合わせていくことが、お互いの協調的な関係づくりにつながるのだと論
じられています。

 しかし、OJTなど教育訓練をしたくても機会の制約の多い中小企業ではどの
ように協調的な関係づくりを行えばいいのか。そのカギの一つとして、職場で求
められる仕事能力の明確化を進めることを挙げられています。
 
 能力の見える化が進むことで、現状の技能が客観的に評価でき、今後どのよう
な技能を身に付ければいいかが明らかになる⇒どんな教育訓練が必要かが明確に
なる⇒訓練実行後の効果評価もやりやすい、という好循環が生まれるとのこと。

 実務だけでなく、国内外の人材育成に関する研究調査の結果や、マネージャー
の育成過程のインタビュー調査なども紹介されており、読み進めていくにつれて
人材育成の理論と実践をバランスよく理解できます。

 組織内の人材育成についてじっくり考えることができる一冊です。

【本のご紹介 vo.129】『なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学』

『なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学』
 加藤 洋平(著)/日本能率協会マネジメントセンター

 ・なぜ人と組織はなかなか変われないのでしょうか
 ・どうしたら人と組織は変わっていくのでしょうか
 ・人はどのように成長し、どうしたらより成長できるのでしょうか

 上記のような課題を解決するカギとして、本書では発達心理学の一分野である
「成人発達理論」が紹介されています。

 成人発達理論を理解するうえでわかりやすく「レンズ」に例えて説明されてい
ます。
・人はそれぞれ固有のレンズを通して物事を「意味づけ」している
・そのレンズには見え方の「レベル」があり、そのレベルはその人の意識の発達
 段階によって違う
・自分の持つレンズ以上の意識段階は理解できない
 
 部下とのコミュニケーションを良好にしたいという場合、その部下がどの段階
のレンズで物事を見ているのかを理解していないと、よかれと思ったアドバイス
が部下には理解できず、一方的なコミュニケーションになってしまい関係が悪化
してしまう恐れもあります。

 本書では、ある会社の課長が、成人発達理論を取り入れた人財育成コンサルタ
ントが偶然出会うところから物語がスタートします。セッションを通じて、課長
が成人発達理論を自組織に取り入れ、部下の成長が課長自身を成長させていく過
程が描かれています。

「知識やスキル向上だけではなく人としての成長が必要だ」
「そのためには個々に合ったコミュニケーションを取ることが育成には必要だ」
 頭では分かってはいても、実際に取り組むことは容易なことではありません。

 人はどのように成長・発達していくのか。まずはその基本となる発達理論を理
解することは、人や組織の抱える様々な課題を乗り越えていくうえでの一つの支
えとなるような気がしました。

【本のご紹介 vo.128】『会社の中はジレンマだらけ』

『会社の中はジレンマだらけ』
 本間 浩輔 中原 淳(著)/光文社新書

 「絶対に結果を出さなくてはならないハードな案件。
  自分自身でこなす?それとも思い切って部下に任せる?」

 「チーム内にくすぶり始めた時短社員への不満。
  ほかのメンバーを説得する?それとも時短社員に働き方を変えてもらう?」

 「仕事をしない“年上の部下”がいます。
  言いたいことを伝える?それともやり過ごす?」…etc

 どちらを選択しても一長一短があるような事でも、どちらにするか決断しなけ
ればならないという“ジレンマ”が企業・組織では日々生じています。

 では、どのように決断していけばいいのか。本書ではジレンマに直面したとき
の対処の流れ(ジレンマ・マネージング・モデル)が紹介されています。

 いきなり動きだすのではなく、まずは①ジレンマを観察する②ジレンマを理解
する③決断する④リフレクションする(振り返る)という対処のサイクルを回し
ていくことでマネジャーとしての成長につながるといいます。

 本書では、5つの章にわけてジレンマの事例を取り上げ、企業組織の実務家の
視点と人材開発の研究者の視点でどう考えるか、対談形式で議論が進んでいきま
す。その過程を読み進めるなかで、それぞれのジレンマについてどう決断してい
くか読み手自身が紙上の決断経験を繰り返し、コツをつかんでいく流れとなって
います。

 特に印象的だったのは「フィードバック」について、ロケット打ち上げの例を
取り上げられたところです。実はロケットはまっすぐ飛んでいるのではなく、様
々な理由でジグザグに飛んでいるが、その傾きを検知してエンジンの吹き出し口
を調整しているのがフィードバック機構だといいます。とても分かりやすくフィ
ードバックの役割を再認識させられました。

 ジレンマに立ち向かう勇気が持てる、心強い味方になってくれそうな一冊です。 

【本のご紹介 vo.127】『女性活躍の教科書 明日からできる「輝く会社の人材戦略」』

『女性活躍の教科書 明日からできる「輝く会社の人材戦略」』
 麓 幸子、日経BPヒット総合研究所(編)/日経BP社

 男女雇用機会均等法が施行されて30年となった今年。4月から「女性活躍推進
法」も施行となり、女性の活躍に真剣に取り組むことを企業も求められるよう
になりました。

 法律が整備される一方で、「女性の活躍」とはどういうことなのか、なぜ推進
するのか、そもそもの認識が曖昧なまま施策を進めてしまい、効果が出なかった
り、組織での新たな問題へと発展してしまうというケースも出てきているようで
す。
 
 女性の活躍の推進は、「女性のため」にするのではなく、企業価値向上のため
に、企業の持続的成長のためにあることを理解すべきだと本書では述べられてい
ます。

 本書では、まず女性活躍推進法についての解説と、先進企業の事例から見えて
きた女性活躍推進のポイントの紹介から始まり、20社の女性活躍推進を進める
企業の具体的な人事施策の紹介、女性活躍がどのように企業価値向上につながる
のかという理論とデータの提示と続きます。

 女性の活躍といえば両立支援や職域限定といった、女性のために負担を減らす
ことに考えがいきがちですが、そこだけ手厚くすることについては男性側の「優
しさの勘違い」であると指摘しています。

 「女性とはこういうもの」という無意識のバイアスが働いて、その結果として
女性のキャリアを停滞させたり、他の社員へ負担を強いて新たな組織の問題に生
むことにつながるケースもあるとのこと。

 7割以上の企業で、育児期の女性だけでなく、介護や様々な事情で働く上での
時間的な制約が生じている社員が増えていると回答している調査結果も報告され
ています。女性活躍の推進を考えることをきっかけに、男性も含めたすべての社
員の働き方を改革していくことが、結果的に女性の活躍につながると言えます。

 女性活躍のみならず、これからの働き方や組織の在り方を見直すきっかけにな
る一冊です。

【本のご紹介 vo.126】『あなたの職場は、なぜ問題ばかり起きるのか?』

『あなたの職場は、なぜ問題ばかり起きるのか?』
 別所 栄吾(著)/日本経済新聞出版社

 4月といえば新年度。新入社員を受け入れたり、人事異動等で職場内の人の
動きも活発になる時期です。
 
 職場内の人や組織が変わると、新たな職場の問題が発生することもあります。
 また、そもそも人や組織に動きがなくても、問題が次々に起こって「またか」
とうんざりしてしまうというような職場もあるかもしれません。

 職場での問題の多くは、技術的なことより、職場での人間関係や仕事の進め方
などに起因するといいます。また、職場の問題の原因は多様であり、解決策も1
つではないため、「全体的」に対応することが大切とのこと。

 本書では、職場の問題点について全体的に対応するために、何が問題なのか気
づくという手順から問題解決を進めていくことを提案されています。
 
 まずは具体的な問題の事例を挙げ、なぜ問題が起こるのかメカニズムを理解し
ます。問題が特定できたら、その問題の種類(本書では「見える問題」「探す問
題」「創る問題」の3つに分類)に応じた解決策に結び付けていきます。

 次は解決策を行動に移す段階ですが、実際には解決策が出ても、行動に移すこ
とができなければ解決に進みません。そこで、解決への行動を妨げる要因の起こ
るメカニズムも理解したうえで、行動を定着継続、そして発展に向かうための考
え方も紹介されています。

 いかに良い理論でも、人は無理だと判断したことは取り入れない、という意味
で、「理論は習慣に負ける」という言葉が本書中で何度か登場します。

 うまくいったこともいかなかったことも、そのプロセスを振り返り、メカニズ
ムを全体的に理解しようとし続けることが常に習慣を見直し、よりよい習慣につ
ながるのかもしれません。  
    
 年度初めに職場を見直したり、これからの職場を考えるきっかけになりそうな
一冊です。

【本のご紹介 vo.125】『サーバントであれ ― 奉仕して導く、リーダーの生き方』

『サーバントであれ ― 奉仕して導く、リーダーの生き方』
ロバート・K・グリーンリーフ(著) 野津智子(翻訳)/英治出版

先日、グーグル社で実施された生産性向上プロジェクトにおいてある分析結
果に関する記事が発表されました。
※記事の詳細は下記を参照ください。
 『グーグルが突きとめた!社員の「生産性」を高める唯一の方法はこうだ』
(「現代ビジネス」より)
  ⇒ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48137

 分析の結果、生産性の高いチームにはある特徴が見つかりました。それは
「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」といった安らかな雰囲気が
チーム内で自然と育まれているとのこと。

 では実際にどうしたらそのような雰囲気を組織内で作り出せるのでしょうか。
 その一つのヒントとなりそうなのが、本書で取り上げられている「サーバン
ト・リーダーシップ」という考え方です。

 サーバントとは奉仕という意味で、リーダーシップとは相反するような言葉
ですが、本当のリーダーシップとは従業員や顧客、コミュニティーを含めた他
者の役に立つことを最優先に考えるものだといいます。

 奉仕がしっかりできているかどうかは、奉仕を受けた人が成長し、その人自
らサーバントとして周囲のコミュニティーなどに自主的に働きかけるような変
化を遂げているかどうかで明らかになります。

 本書の内容は数十年前に書かれた小論を編集されたものですが、特定の人に
寄らず、「ビジョン」をリーダーにして、お互いが奉仕し合う組織づくりなど、
今の社会だからこそタイムリーな内容だと感じました。
 
 サーバントの考え方は、組織のなかで自立の輪の広がりを自然に作っていく
雰囲気づくりに重要な役割を果たしそうです。
 これからのリーダーシップのあり方を改めて考えさせられる一冊です。   

【本のご紹介 vo.124】『ファシリテーション・ベーシックス ―組織のパワーを引き出す技法』

「ファシリテーション・ベーシックス ―組織のパワーを引き出す技法」
堀公俊(著)/日本経済新聞出版社

「ファシリテーション」に関する手法やツールを紹介する本も多数出版され
るようになり、言葉としても身近なものになってきました。

 一方で、ファシリテーターを実際に務めることは難しい、敷居の高いという
イメージも持つ人も多いように感じます。

 本書中でファシリテーションを料理に例えて説明されていますが、その時々
のメンバーや環境といった場(=素材)の組み合わせによって、手法やツール
(=レシピ)を工夫したり、場合によってはメニューをガラっと変えたり、想定
外のことにも対応することがファシリテーター(=料理人)に求められます。

 そこで必要となるのは、今ある素材でレシピを柔軟に判断して調理する、料
理人としての腕、つまり場を進行・促進させるためのスキルです。

 ファシリテーションは知識ではなく、智恵だといいます。智恵をつけるには
経験を積むことが必要ですが、本書ではやみくもに試すのではなく、経験を効
果的に積むためにファシリテーションの基本の4つの型を覚えることを提案さ
れています。

 4つの型の内容を、初級・中級・上級に分けて解説されており、読んでみる⇒
現場で実践してみる⇒次のステップに進む、という流れで学ぶことができます。

 また、ファシリテーションの現場でよく使われる台詞や、現場でのでのファ
シリテーターの心の動きが解説されており、リアルな場面をイメージトレーニ
ングできます。

 マネジャーや人材育成を担当されている方にも、組織内の効果的なコミュニ
ケーションのあり方の参考になると多いように感じました。

 ファシリテーションを初歩から学びたい方はもちろん、日頃ファシリテーター
を務める機会が多い方にも拠り所となるような、心強い一冊です。

【本のご紹介 vo.123】『オトナ相手の教え方』

『オトナ相手の教え方』
関根 雅泰(著)/クロスメディア・パブリッシング

 いつの間にか教える立場になって、自分の経験則に基づいて教えるものの、
うまく伝わらない…

 教える立場になって初めて、効果的な教え方を学んでこなかったことに気づ
きます。特に様々な経験を積んでいる大人相手となると、教え方も一筋縄では
いかないものです。

 本書では教え方の本質として「相手の立場に立つ」「学習の手助けをする」
という2点を挙げ、その本質に基づいた教え方を実践するポイントを解説され
ています。
   
 教え方のポイントのうち、特に重要な点として「教える前に経験・知識の度
合いを確認すること」と、「一人で教えない」という2点が印象に残りました。

 まず一方的に説明する前に、相手の経験や知識の度合いを確認することで、
相手の経験してきたことや学んできたことを尊重する姿勢が伝わり、教わる側
が素直に受け入れる準備ができます。

 2点目の「一人で教えない」は、教えたくても時間がない、業務内容が複雑で
教えるのが難しいといった教える側の抱える「時間と内容」の課題を、一人で
教えることを抱え込むのではなく、周囲を巻き込むことで解消できるというも
のです。具体的な方法としては、職場の「人脈マップ」を作成し、どんな人に
どんな形で協力してもらうのかを明らかにするといった方法が紹介されていま
す。

 教える側が陥りやすい問題に対しての対策だけでなく、あらためて「教える
こと」のもたらす教える側のメリットもまとめられています。

 教えるということに対し、少し肩の力を抜いて取り組むヒントが得られる一
冊です。

【本のご紹介 vo.122】『「経験学習」ケーススタディ』

『「経験学習」ケーススタディ』
松尾 睦(著)/ダイヤモンド社

 ある調査によると、人の成長を決定する要因は仕事経験を通した学びが7割
を占め、他者からの学びが2割、読書・研修からの学びが1割とのこと。

 しかし、人はただ経験しただけで成長するのではなく「経験から学ぶ力」を
身につける必要があり、「経験する⇒振り返る⇒教訓を引き出す⇒新しい状況
へ応用する」という経験学習のサイクルをいかに回すかが重要だといいます。

 本書は、経験学習の原理原則をまとめられた『「経験学習」入門』(2011年
出版)の続編として出版されたものです。

 本書では『「経験学習」入門』から、経験学習についての基本的な考え方を
紹介したうえで、具体的に企業でどのように経験学習が導入されているのか、
どのようにして経験学習を取り入れたらいいのか、方法論や仕組みについて9
つの企業の事例を取り上げて解説されています。

 本書の面白いところは、先行事例の企業を紹介した後、その先行事例を取り
入れようと奮闘する企業の事例を紹介しているところ。

 自社の状況に合わせた経験学習サイクルを試行錯誤しながらデザインしてい
く様子が非常にリアルで、これから取り組もうとするときの参考にもなります。

 各企業の事例を見ると、定期的な個人面談の導入など多くの企業でも取り入
れられているようなベーシックな取り組みが主です。

 取り組み自体を一旦取り入れることは簡単かもしれませんが、いかに形骸化
させず、組織の中で定着させて、効果へと結びつけていく仕組みづくりができ
るかどうかがポイントだということが事例からわかります。

 組織活性化、新入社員の育成、新人と中堅・マネジャーが共に育つ「共育」
関係づくりといったキーワードが気になる方にはおすすめの一冊です。

【本のご紹介 vo.121】『6つの帽子思考法-視点を考えると会議も変わる』

「6つの帽子思考法-視点を考えると会議も変わる」
エドワード・デ・ボーノ(著) 川本英明(訳)/パンローリング

 ものを考えるとき、私たちは多くのことを一度に考えてしまい、頭の中が整
理できなくなることがあります。

 それは会議の場も同様で、意見が多岐にわたって収集がつかなくなることも
あれば、逆に視点が凝り固まってしまい、場が停滞することもあります。

 それらの問題を防ぐためには、ものを考えるときには一度に一つのことを考
えるようにすること、一つの視点で考えた後にまた次の一つの視点に切り替え
て考えるようにすることが有効であるといいます。

 その考え方をベースにして、便利に使えるようにしたものが「6つの帽子メ
ソッド」(並行思考)です。

 白い帽子…客観的な事実とデータに基づく視点  
 赤い帽子…思ったままの感情的な視点
 黒い帽子…警戒と注意を促す、弱点への視点 
 黄色い帽子…肯定的な側面への視点
 緑の帽子…創造性と新しい考え方の視点
 青い帽子…プロセス全体を構成する視点

 あるテーマについて「常に全員が同じ視点」から見ることでお互いの意見を
同時並行的に考え合わせることができるだけでなく、異なる6つの考え方の
帽子を被りかえることで多面的な検討もできるというのが6つの帽子メソッド
のポイントのようです。

 メソッド自体とてもシンプルで使い方も簡単で取り入れやすいですが、本書
ではさらに効果的な使い方も事例を交えて紹介されており、実践的です。

 会議の場をもっとおもしろく創造的な場に変えてみたいとお考えの方のみな
らず、マネジメントや対人支援に関わる方にもおすすめの一冊です。  

【本のご紹介 vo.120】『システム思考をはじめてみよう』

「システム思考をはじめてみよう」
ドネラ・H・メドウズ(著) 枝廣 淳子(訳)/英治出版

 “問題は、つながっている。解決策もつながっている。”

 システム思考とは、「つながり思考」とも紹介されていますが、ものの背後
にある構造を、ありのままに見ることで、物事のつながりをたどって全体像や
構造を見る考え方のことです。

 従来の経験や考え方が通用しない、新しい変化が次々と起こる時代を生き抜
くために最も大事なことは、「従来の経験や考え方から自由になる」こと。

 「従来の経験や考え方から自由になる」こととは、「自分(たち)の思い込
みに気づく」ということ。経験や実績を積めば積むほど思い込みに気づくのは
難しくなるのかもしれません。

 では思い込みに気づくためにどうしたらいいか、カギとなるのがシステム思
考だといいます。

 システム思考を活用して、今まで気づかなかった、意識していなかったつな
がりを明示的に表すことで、問題の全体像が把握でき、効果的な働きかけを考
えることができる。さらに働きかけがどう影響するかも予測して対応策を考え
ることができるとのこと。

 本書では、著者が残した様々な組織や産業、環境問題などの事例を盛り込ん
だエッセイを通じて、システム思考的なものの見方や考え方が紹介されていま
す。

 システム思考の具体的で身近な活用法として「フィードバック」が紹介され
ています。自分の行動がどうつながったのか、生み出した結果をありのまま都
度振り返る機会を作ることが、物事の全体像をつかむ第一歩のようです。

 変化に惑わされず、物事の本質をつかむ。新年に読んでおきたい一冊です。

【本のご紹介 vo.119】『モチベーションの新法則』

「モチベーションの新法則」
榎本博明(著)/日経文庫

 「モチベーション」というと、いわゆる精神論や、個人の成功体験を紹介す
るものが多いイメージがあります。

 またモチベーションに関する理論についても、時代が変化しつつあるなか、
今の時代に合ったものなのか、そもそも欧米から入ってきた理論が多く、日本
人にとってしっくりくるものなのかどうか、検証が必要な時期なのかもしれま
せん。

 本書では、心理学の最新の研究に基づいたモチベーションに関する理論を紹
介しながら、個人の成功体験に頼らずどんな個人や組織にも活用でき、なおか
つ日本人の特徴に合ったモチベーションについて述べられています。

 ・ほめて育てるということが流行っているが、思わぬ落とし穴がある…
 ・普段のちょっとした声かけが効果があるが、そのコツは…
 ・内発的動機づけがますます重要になると言われているが、外発的動機づけ
  も再評価されつつある…
 ・目標設定は業績目標と学習目標という視点で考える…
 ・無意識の知覚がモチベーションに関係している…

など、モチベーションを高める方法としてよく言われる内容から新たな視点ま
で、どういった根拠で必要なのか、逆に効果がない場面はどんな時などのポイ
ントが解説されています。

 個人的には「こうすればうまくいくとわかっているのになぜできないのか」
ということを取り上げた章が身につまされることも多く、早速取り組んでみた
いことも発見できました。

 本書中で、日本人ならではの組織のモチベーションの特徴を「監督を男にし
たい」モチベーションと言い表されています。そんな関係性を重視する特徴を
活かしつつ、新しい理論を組み合わせていく。これからモチベーション・マネ
ジメントについて学ぶことのできる一冊です。

【本のご紹介 vo.118】『ダイアローグ・マネジメント 対話が生み出す強い組織』

『ダイアローグ・マネジメント 対話が生み出す強い組織』
 ケネス・J・ガーゲン ロネ・ヒエストゥッド (著)
 伊藤 守 (監修, 翻訳)  二宮 美樹 (翻訳)

 最近、「対話」について様々なところで取り上げられるようにな
りました。

 コミュニケーションの概念が、単純に聞く・話す・伝えるという
ものから、多種多様な知識や考えを組み合わせたり、つなげたり、
調整するスキルに変化してきているなかで、「対話」の重要性がま
すます高まっているといえます。

 対話の必要性についてはある程度分かっていますが、では組織の
現場で、どのように対話を活用すればいいのか、どう生み出してい
けばいいのでしょうか。

 本書では、対話を行う能力だけでなく、対話に参加しながらも、
対話で「何が起きているのか」に気づくために、展開中の会話を自
分の内側でモニター(監視)する能力を養うことに着目しています。

 組織といえば、よく「機械」と比喩して捉えられ、個人を歯車の
一部のような表現をされていますが、本書では組織を「水」として
捉えた見方にシフトすることが現代の環境に最も連動しているので
ないかと言います。

 絶え間なく流れ続ける水のように、周囲の環境や社員と「合流」
しながら作られているものが組織。共に流れる様子を観ながら、調
整していくプロセスが対話だという例えは、対話のイメージとして
とても分かりやすく感じました。

 対話の在り方についてあらためて考えさせられる一冊です。