【本のご紹介 vo.130】『組織のなかで人を育てる-企業内人材育成とキャリア形成の方法』

『組織のなかで人を育てる-企業内人材育成とキャリア形成の方法』
 佐藤 厚(著)/有斐閣

 人材育成について考えるときには、組織の立場からどう育成の仕組みをつくる
か、どう働きかけるのかという「育てる」視点と、個人がいかに自律的にキャリ
アを形成していくべきなのかという「育つ」視点の2つの考え方があります。

 この2つの視点は、別々に考えられる傾向がありますが、これからの人材育成
において、これらの視点を同時に意識して人材育成を考えること、つまり個人と
組織との協調的な関係づくりの必要性を本書では述べられています。

 個人と組織との協調的な関係づくりを行うためには、個人が考える「なりたい
人材」と、組織が考える「なってほしい人材」を丁寧にすり合わせていくことが
重要だといいます。

 そのすり合わせの過程で最も重要視されているのが、日々の仕事を通じての訓
練(OJT)です。日々のOJTを通じて、訓練する側(組織)の、部下育成を
進めるためのPDCAサイクルと、学習する側(個人)のPDCAサイクルをう
まくかみ合わせていくことが、お互いの協調的な関係づくりにつながるのだと論
じられています。

 しかし、OJTなど教育訓練をしたくても機会の制約の多い中小企業ではどの
ように協調的な関係づくりを行えばいいのか。そのカギの一つとして、職場で求
められる仕事能力の明確化を進めることを挙げられています。
 
 能力の見える化が進むことで、現状の技能が客観的に評価でき、今後どのよう
な技能を身に付ければいいかが明らかになる⇒どんな教育訓練が必要かが明確に
なる⇒訓練実行後の効果評価もやりやすい、という好循環が生まれるとのこと。

 実務だけでなく、国内外の人材育成に関する研究調査の結果や、マネージャー
の育成過程のインタビュー調査なども紹介されており、読み進めていくにつれて
人材育成の理論と実践をバランスよく理解できます。

 組織内の人材育成についてじっくり考えることができる一冊です。